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頸肩痛

五十肩の診断と治療

img_keibuいわゆる50肩は肩の痛みと関節可動域制限を特徴とする症候群である。肩関節の癒着、関節包の縮小があり、関節内の変性に何らかの外傷が加わり生じると思われる。ローテータカフのimpingmentが原因で肩峰下滑液包に障害が生じていることもある。ロ―テータカフの変性が進行すると、肩腱板断裂となるが、その場合は特有の症状から診断は容易であり、50肩からは除外される。

上腕二頭筋長頭腱炎が原因で痛みと運動障害が生じる可能性もある。またいわゆる肩こりの症状が50肩と併存することもあり、その場合はあわせて治療をおこなう。

写真は頚部椎間板ヘルニアのMRI。

1.肩甲上神経ブロック

50肩に対して最も選択される神経ブロック法である。外来で安全に行え、痛みに対する治療効果は高い。肩甲上神経は知覚、運動、交感神経線維を含む混合神経である。肩関節及び上腕を支配し、その線維はC4-6に由来する。

体位は坐位で行う。患者の背部に立ち、肩峰と肩甲棘を触知する。使用する薬液は局所麻酔薬を5-10mlである。肩甲部を消毒の上、手術用手袋を使用して清潔操作で行う。

針の刺入点は肩甲棘の中央部で矢状面に平行に引いた線と肩甲棘に引いた線との二等分線で外上方25mmの点である。その点から皮膚に垂直に刺入すると棘上窩で肩甲骨にあたる。

棘上窩に注入された局麻薬が浸潤して、肩甲上神経をブロックする。効果が得られると関節の痛みが消失し。上腕の外転,外旋が不可能となる。

合併症は非常にまれである。気胸の報告があるが、我々は経験がない。肩甲上切痕を通過させようとすると起こる可能性がある。神経損傷や血管損傷も殆どおこらない。

週に1.2回行い、治療後に肩関節の運動を行う。

2.肩甲背神経ブロック

肩甲背神経はC4から由来する運動神経である。鎖骨上部で中斜角筋を貫き、後斜角筋と肩甲挙筋の間をとうる。肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋に分布する。

50肩の時にはしばしば肩甲背神経の走行に沿って圧痛点が認められる。

遷延する痛みから生じた筋攣縮がこの神経ブロックにより軽減し治療効果があるのかと考えられる。

1)中斜角筋部

仰臥位で健側に軽く頭部を向け患側の胸鎖乳突筋が浮き出る体位とする。胸鎖乳突筋の中央部の背側縁を刺入点とする。胸鎖乳突筋の後内側の局麻薬を浸潤させる。ここでの穿刺では浅頚神経叢も同時にブロックされる。

2)肩甲挙筋部

体位は坐位で行う。患者の背側に立つ。第1ないし2胸椎棘突起外側6cm前後を刺入点とする。肩甲挙筋を貫いたところへ局麻薬を浸潤させる。

3)小、大菱形筋部

肩甲棘根部と棘突起の中間部、並びに肩甲骨内側縁の中央部と棘突起の中間部がそれぞれ、小,大菱形筋の刺入部となる。僧帽筋を貫いたところで浸潤麻酔をする3)。

3.腋窩神経ブロック

肩甲骨外側部で四角腔内に針を穿刺し、腋窩神経をブロックする。四角腔は上が小円筋、外側が上腕骨頸部、内側が上腕三頭筋長頭、下が大円筋で囲まれた腔である。腔内で肩関節に枝を出し、浅枝と深枝にわかれ、小円筋、三角筋を支配し上腕筋に外側の皮枝をだす。

刺入点は上腕三頭筋と上腕骨頚部の間で、大円筋の上縁が交差する点であり、筋肉を触診して探す。

2-3cmの穿刺で局麻薬を注入する。注入時に上腕の外側に放散痛があれば効果は確実である。効果が得られると肩関節の外転が弱くなる。

4.星状神経節ブロック

星状神経節ブロックはペインクリニックで最も頻繁に行われる神経ブロックの一つである。このブロックは肩関節や上肢の血流を促進し50肩の除痛とリハビリテーションに有効である。

下頸神経節と第一胸神経節が癒合したものが星状神経節である。この神経節は胸腔鏡下交感神経切除術でしばしば胸腔内から観察が可能である.第7頸椎横突起と第一胸椎横突起の腹側に存在する。この神経節は椎前葉と頸動脈鞘に挟まれている。そのため針先を横突起に接触させて薬液を注入すると両筋膜に挟まれたコンパートメントに薬液が広がりブロック効果が得られる。

しかしながら第七頸椎横突起は前結節を欠き椎骨動脈が横突起上を走っている。そのため穿刺時にこの動脈を損傷する可能性が高い。椎骨動脈や静脈から遷延性に出血すると咽後血腫や縦隔血腫を生じる。その結果気管粘膜の浮腫を生じ重篤な気道閉塞となる可能性がある。そのため、最近では第七頸椎横突起でなく第六頸椎横突起の前結節に針を当てて行う方法が標準となっている。このレベルでは椎骨動脈は前結節の背側を走り血管穿刺の可能性は低い。この方法でも第七椎骨でのブロックと同様のコンパートメントに薬液が広がるために十分な交感神経ブロック効果が得られる。

患者を仰臥位とし枕をはずす。頸部が緊張しない程度に軽く顎をあげ頸椎を後彎させる。

また緊張をとるために1cm程度口を開けさせる。こうすることで頚椎横突起が浅くなり頸部腹側筋肉の緊張が減弱し触診がしやすくなる。

5.腕神経叢ブロック

腕神経叢ブロックは肩腕の痛みの軽減に有効であるしかし従来の神経叢を穿刺する方法では施行時に痛みがあること、近くに動脈が走っているのでそれを穿刺する可能性があること、神経損傷の危険性があることから、麻酔目的には行われても治療目的に行われることは少なかった。

しかしわれわれは神経叢を穿刺しないで斜角筋間でブロックする方法である、鎖骨上レントゲン透視下腕神経叢ブロックを採用し肩甲部痛、頸部痛の治療に用いている。これは50肩のモビリゼイションにも有効である。

腕神経叢ブロックは古くから多くのアプローチが行われている。鎖骨上法、腋窩法、斜角筋間法などがあり、電気刺激で針をガイドする方法もある。

われわれは効果の確実性と安全性、短時間に行えることから鎖骨上穿刺で、レントゲン透視下法を行っている。

この方法はレントゲン透視下に第一肋に針を当て、前斜角筋と中斜角筋間に薬液を浸潤させる方法である。頚神経叢にも薬液が及ぶために腕神経叢と同時に頚神経叢と頸部交感神経がブロックされ、ホルネル兆候も認められる。

6.肩関節注入

肩関節注入はヒアルロン酸、または水溶性ステロイド、ないしそれらと局麻薬の混合液で行う。

坐位で胸をそらせて両手を体側に自然のおろし体位とする。

肩に手をかけ利き腕対側に拇指で烏口突起を触知する。体格のよい患者では時に触知が困難であるが、指を動かして探すと触れやすい、

烏口突起の約1cm外側からわずかに内側を向けて針を穿刺すると骨に当たることなくまた痛みも無く関節腔に入る。

針は通常32mm 24Gディスポーザプル針を使用している。

関節造影を行うときは透視のテーブルで仰臥位で行っている。

ヒアルロン酸が関節外に漏れると痛みを訴えるので正確に関節内に注入する必要がある。

7.肩峰下滑液包注入

impingement  injection test に用いられる。棘上筋腱炎、石灰性腱炎などの腱板異常、肩峰下滑液包炎、骨棘形成、烏口肩峰靱帯の肥厚などで第二肩関節でのimpingement が生じると肩関節の外転が困難となる。そこで肩峰下滑液包に局所麻酔薬を注入すると痛みが消失して、外転が可能となる5)。

坐位でおこなう。まず肩峰を触知しその中央やや前方で15mm下からやや上向きに針を穿刺する。局所麻酔薬10mlと水溶性ステロイドの混合液を注入する。ヒアルロン酸を注入してもよい。

8.上腕二頭筋長頭腱鞘内注入

上腕二頭筋長頭腱鞘炎の診断と治療に用いる。大、小結節間溝部に圧痛があれば上腕二頭筋長頭腱鞘炎が疑われる。

この圧痛点に局所麻酔薬と水溶性ステロイドの混合液を注射する。

9.トリガーポイント注射

肩の圧痛点は上に述べた神経ブロック、注射部位としばしば重複する。

肩の代表的な圧痛点は後頚部、僧帽筋部、肩甲間部、肩甲上部、肩甲上角部、結節間溝、大結節、関節裂隙などである。

それらへの局所麻酔薬の注射はしばしば診断に有効であるが、また治療としても有効である。

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