神経根パルス高周波法
脊椎病変(脊柱管狭窄・椎間板ヘルニア・圧迫骨折・脊椎手術後症候群など)や帯状疱疹による難治性の神経痛に対する治療法です。
神経根パルス高周波法は、四肢や体幹の痛みに関連する神経根に針を近づけ、針の先端から高周波電流を低温(42℃以下)で通電することにより神経の周りに電場(電気が及ぶ空間)を発生させ痛みの伝達を抑えていく方法です。
パルス高周波法は、神経を凝固変性させる可能性は低く知覚低下や筋力低下が生じにくいです。
鎮痛効果の持続期間は、数週から数か月と言われています。鎮痛効果が減弱してきたら、繰り返し行うことも可能です。
ブロック前の注意
血液を止まりにくくする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を服用されている方は、この治療が受けられないことがあります。このような薬を服用されている場合は必ず事前に申し出てください。
植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器をご使用の方、造影剤や局所麻酔薬にアレルギーがある方はこの治療が受けられませんので、申し出てください。
治療のあと、足や腰に力が入りにくくなることがあります。
急に立ち上がるとふらついて転倒することがありますので、看護師がお声かけするまで、安静にしてください。治療後、筋力の回復まで数時間かかることがあります。お時間に余裕をもってご来院ください。
ブロックの方法
- レントゲン室でレントゲン透視を使用して行います。
- うつ伏せになり、背中や腰がでるように衣類を広く開けて頂きます。
- レントゲンで確認をしながら針を目標となる神経の近くに進めていきます。
- 針先から電気を流し電気刺激で患部の刺激感(ビリビリする電気的な感覚)や筋肉の動きをみて、正しい位置にあることを確認します。
- 造影剤を使用して針先の位置を確認します。
- 高周波電流を流す前に神経の周りに局所麻酔薬を注入し、通電中の痛みを和らげます。
- パルス高周波法の通電時間は1神経あたり6分間が目安です。患者さんの症状に応じて、通電時間は調整します。
- 注射が終わったら、40~60分間ほどベッドで休んで筋力が回復したらご帰宅いただきます。
合併症
- ① 熱傷
- 皮膚や神経周囲の組織に熱傷が生じることがあります。皮膚が赤く腫れたり、黒く変色することがあります。塗り薬、内服薬、あるいは外科的な処置が必要になることがあります。
- ② 神経刺激痛
- 神経根への通電により、神経の刺激痛が数日続くことがあります。刺激痛は、通常自然に軽減していきます。
- ③ 神経根損傷
- 脊柱管内へブロック針を進めていく途中で、まれに神経を傷つけてしまい、強い痛みやしびれが生じ、しばらく残ることがあります。
- ④ 気胸
- 目的とする神経が胸椎付近の神経の治療では、まれに胸膜や肺を穿刺し気胸が生じることがあります。帰宅後に呼吸が苦しくなった場合は、ご連絡ください。
- ⑤ 感染症
- まれに、針の通り道にそって、感染をおこすことがあります。背中や腰がだんだん痛くなったり、発熱や頭痛などが現れたりします。治療法は、抗生剤の内服や点滴を行います。
- ⑥ 出血、血腫
- ブロック針が血管を傷つけ、出血をおこすことがあります。ほとんどの場合、出血は自然に止まりますが、まれに脊柱管内に大きな血腫(血の塊)ができてしまい、その血腫が神経を圧迫すると、下肢に力が入らない(麻痺)などの症状が現れます。この場合、緊急に処置が必要になります。
※合併症による検査、治療費は通常の保険診療扱いとなりますので、ご了承ください。
医療法人社団 SPC会 塩谷ペインクリニック
大塚 康久
小杉 志都子